いくちゃんとマッタク・オラヘンの森




早起きして、くぬぎの森へ。
ひややりとした朝5時の空気は、新宿はしご酒明けのそれとは、やはり似ているようで似ていない。主に匂いの問題だけど。

小さい頃、よくカブト虫を採りにきた。
蜂蜜を塗っておくと、色々な虫が集まる。
恐ろしいスズメバチやハンミョウ(小さい頃、ハンミョウが異常に怖かった)までお呼ばれしていたので、ドキドキしながら薄いもやの森で息を殺していたものだ。 
 

ぷかぷか眠気の飛沫を飛ばす育子嬢を連れて、30年前に通い始めた、古くてどっしりとした木の株を目指す。

が。 
 
 
「あり?いないなぁ。 
まったくおらへん」
 
「カブちゃん、いないね・・マッタク・オラヘン! 
 なんでかなー?いくちゃんの蜂蜜、今日は食べないのかな?」 
 
(くぬぎ的な)ゴールドラッシュから30年。 
活気のあったはずのクヌギの大木には、虫っ子いっぴき、残っていなかった。


オカアサン、
昆虫にも過疎化のそよ風が。 
優しい顔して、ぐるぐる纏わりついてるのでせうか。

 
 
しょうがないので、育子とハイロウズを歌って帰る。 
 
 
♪あらわれたのは
 カブトムシ様 
 どんなもんだい 
 おいらのツノは 
 
 あらわれたのは 
 スズメバチ
 森はいいだろ
 特に夏はな 
 
 
 夏だな 夏だな 夏なんだな 
 
 
 
 
育子に元気なカブトムシとか、「スイギュウ」(ミヤマクワガタ)とか、見せてあげたかった。
今日はたまたま、だといいけれど。